ドイツの内密出産制度について調べてみた

中絶、養子縁組

日本の赤ちゃんポストの病院で安全な内密出産が可能に

ドイツでは2014年に導入された内密出産制度が熊本市の慈恵病院で運用が開始されました。

内密出産制度とは赤ちゃんの自己の出自を知る権利と内密にしたい妊婦の権利を両立させる制度です。

「内密出産」妊婦受け入れ 赤ちゃんポストの熊本・慈恵病院

 

 

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日本の赤ちゃんポストと妊婦支援

2000年にドイツで運用が始まった Babyklappe は2018年には90か所以上増えていて、その多くは病院に設置されています。

日本では2007年に初めて「こうのとりのゆりかご」が設置されましたが、2019年においても唯一の赤ちゃんポスト。

2017年には妊娠出産に関わる相談窓口を全国に設置するために法整備を開始しましたが、自治体の「努力義務」レベル。圧倒的に妊婦支援が足りていません。

 

母子支援の新たな可能性 ドイツの内密出産法って?

2014年「妊婦支援の拡大と内密出産の規定のための法律」が施行されました。この内密出産法は途方に暮れている妊婦に適切な支援と医療的手当を与えることを目的に始まり、政府が子どもの委託システムを国家の責任として法制化しました。

これにより妊娠を隠したい女性も正規の支援制度を受けられるようになりました。

敷居の低い相談窓口を全国に設置
内密出産を新たな選択肢とする
相談の基準設定
支援制度の継続的周知を法的義務化(ネット、印刷物、ラジオ、テレビ、有名ブロガーによるユーチューブやインスタグラムなどSNSでの周知、妊娠検査薬メーカーのパッケージなど)

 

ホットライン

匿名、24時間年中無休で無料です。電話、メール、チャットなどを通して男女どちらでも情報提供をし、支援に結び付けます。多言語での対応もあります。相談員は全員女性です。

 

二段階の相談構想

第1段階の妊娠相談

匿名希望者はドイツに1,600か所ほどある妊婦相談所を訪ねます。相談員は女性がどのような決断でも本人が結論に達するまで寄り添います。

 

第2段階で内密出産に向けた相談

匿名出産を決断した後に内密出産の制度について説明を受けます。この時守秘義務のある妊娠相談所の相談員一人にのみ身元を明かします。

そして手続きを進めるために仮名を決め、赤ちゃんのために一つもしくは複数の名前を選び、妊婦が選んだ病院や助産師に申し込みます。

 

匿名性の保障

ドイツでは出生から16年間母親の匿名性が保障されます。その後に子どもが出自を知る権利が与えられます。

母親が仮名で病院や助産師と手続きをすると、青少年局に連絡がいきます。青少年局は一時的な後見人になります。

母親の氏名(出自証明書)は封筒に封印し、だれにも閲覧できないように金庫で保管されます。

 

分娩からの流れ

母親は医療的手当を受けながら分娩します。

母親の配慮権を停止し、子どもに後見人がつきます。

病院や助産師が妊娠相談所に内密出産を報告します。出生の日付と場所を記載し出自証明書と一緒に役所に届けます。そして一週間以内に身分登録所に出生データを通知し出生を登録します。必要な情報は母親の仮名と母親が選んだ子どもの名前のみです。

 

先に出産してしまっていた場合

内密出産を希望するのに先に出産された場合も、厳密な条件を満たせば内密出産とすることが可能です。ですが出生一週間以内に事前に受けるべき相談を受ける必要があります。

 

内密出産後

子どもを手放す場合、手元で育てる場合の二つのプロセスがあります。

 

手放すことを望む場合

養子縁組の手続きを開始。子どもは16年後に出自を知ることができます。母親に極めて重要な理由がある場合(強姦による妊娠など)、閲覧権に異議申し立てをすることが可能で、母子双方の利益を考慮し家庭裁判所が判断します。

 

育てることを望む場合

養子縁組の手続きが終了するまでであれば(ドイツでは通常一年)、身元を行政に明かして子どもを取り戻すことが可能です。子どもの福祉に危機が無ければ改定裁判所から取り戻しの承認を得ることができます。その後産みの母の配慮権が復活し、希望に応じて支援を受けられます。

 

 

関係機関の連携

妊娠相談所、医療関係者、養子縁組斡旋機関、青年局、身分登録所、家庭裁判所の連携が必要です。

関係機関はそれぞれに十分な情報があり、内密出産制度に対して肯定的な立場をとっています。そしてドイツ国民もこの制度を前向きに評価しています。

 

内密出産費用

妊娠検診、出産、出産後の費用はドイツ政府の負担です。

 

 

赤ちゃんポストから内密出産へ

ドイツでは1999年から匿名出産と赤ちゃんポストによる子どもを引き渡せる制度があり、年間100人ほどの委託がありました。2012年の研究では把握出来るだけで年間20~35人ほどの子どもが遺棄や殺害されるという悲しい結果もありましたが、赤ちゃんポストによって多くの命が救われました。

ですが匿名でできる子どもの委託では分娩など医療的なサポートが保障されていないこと、子どもの出自を知る権利が保障されていないことなど問題点もありました。

 

内密出産制度を優先

内密性の約束

妊婦と子どもの命を守るために安心して相談して支援を受けるには匿名性の保障が第一でした。

倫理的な問題も長年議論が重ねられてきました。

そして新たに医療と法的面に安全な内密出産制度の提供によって、赤ちゃんポストの代替策となるように法整備が進められました。

ドイツの内密出産制度は日本以外にもデンマークやオランダからも高い関心が寄せられています。